新生児ママパパ必読: 乳幼児の吐乳と溢乳の問題について

乳幼児の吐乳と溢乳の問題について

台湾三軍総合病院小児科教授 王志堅(台湾)

※吐乳:とにゅう、ミルクを吐くこと・溢乳:いつにゅう、ミルクが口からあふれること

はじめに

真理子さんの赤ちゃんは生後1週間が過ぎたばかり。授乳後に必ず1、2口ミルクを吐くことがあり、時にはそれでむせてしまうこともあります。そのため小児科を受診し、授乳中に気をつけるべき点や乳児の吐乳を避ける方法について相談しました。

また、新米ママも、生後2か月が経ったばかりの赤ちゃんを小児科の緊急受診に連れて行きました。最近、赤ちゃんがミルクを飲んでから15分後に必ず吐乳してしまい、吐いたミルクは新鮮な色をしており、勢いよく噴き出します。さらに、しばらくすると赤ちゃんはお腹が空いてまたミルクが欲しいと泣き始めますが、同じようにミルクを飲んでから15分ほどでまた吐いてしまいます。この状態が2日間続いており、その間赤ちゃんはずっと泣き続け、おむつ交換の回数も減り、排便もありません。

この2つの症状は、乳幼児によく見られる吐き戻しの問題です。

 

一、新生児はなぜ溢乳(いつにゅう)をするのでしょうか?

新生児の溢乳は、授乳後すぐに少量のミルクが口から流れ出ることを指し、その量は約1~2スプーン(15ml〜30ml)ほどです。主な原因は、新生児の胃と食道がまだ完全に発達していないこと。授乳量が多すぎると、胃食道逆流のような現象が起こり、溢乳が発生します。また、赤ちゃんが母乳や哺乳瓶からミルクを飲む際に空気を吸い込むことがあり、そのために胃が膨張し、げっぷをするときに溢乳が起こりやすくなります。 

 

二、新生児の溢乳の発生率はどれくらいで、一般的にどのくらい続くのでしょうか?

半数の赤ちゃんは、生後3ヶ月まで毎日少なくとも一度は溢乳を経験します。4ヶ月になると、約70%の赤ちゃんが溢乳をするようになりますが、その後、10~12ヶ月になると5%まで減少します。赤ちゃんが直立しているときは、平らに寝かせているときよりも溢乳が少なくなります。

また、溢乳は赤ちゃんが泣いたり活動したりすることで増えることがあります。一般的に、新生児は生後すぐに溢乳を経験しますが、これは正常な生理反応であり、軽度の問題です。溢乳の量は通常それほど多くなく、赤ちゃんの成長や発育に影響を与えることはありません。

この状況は、赤ちゃんが数ヶ月経つとともに、※下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)が強くなることで徐々に改善されます。少数の赤ちゃんは、溢乳が1歳頃まで続くことがありますが、過度に心配する必要はありません。

※下部食道括約筋:かぶしょくどうかつやくきん、胃の内容物が食堂に逆流しないように働いている、食堂と胃の境目の筋肉

 

三、どのようにして赤ちゃんの溢乳を減少させることができるでしょうか?

溢乳の頻度が高いと、親にとっても悩みの種となります。以下の点に注意すると良いでしょう。

まず、赤ちゃんが自分の食量を調整できるようにし、過剰に授乳しないようにします。授乳中に赤ちゃんの背中を軽く叩いてげっぷをさせ、胃の余分な空気を排出することで溢乳を防ぎます。

次に、授乳時にはできるだけ直立の姿勢を保ち、平らに寝かせないようにして空気の吸入を減らします。

さらに、哺乳瓶を使用する場合は、十字の乳首を選ぶと良いでしょう。これにより、赤ちゃんが早く吸いすぎて大量の空気を吸い込み、溢乳を引き起こすのを防げます。

もしこれらの方法でも溢乳を防げず、特に体重増加に影響が出る場合は、小児科医に相談してください。現在は、溢乳を減少させるための特別な調整ミルクもあります。

 

四、赤ちゃんの溢乳時に注意すべき状況

赤ちゃんに授乳した後は、必ず赤ちゃんを直立の姿勢にして背中を軽く叩き、げっぷをさせることで溢乳の機会を減らしましょう。また、授乳後すぐに赤ちゃんを平らに寝かせないようにします。

平らに寝かせると溢乳が起こりやすくなり、赤ちゃんがむせることがあります。溢乳が起こった場合は、赤ちゃんの頭を横に向けて、むせるのを防ぎましょう。

溢乳によるむせを放置すると、吸入性肺炎になる可能性があります。赤ちゃんがむせた場合は特に注意が必要です。

むせが起こり、咳や呼吸困難などの症状が見られる場合、窒息の危険があります。このとき、赤ちゃんの唇、爪、粘膜、および皮膚の色が濃い紫色に変わり、※チアノーゼが現れることがあります。これは体内の酸素不足を示しており、迅速に対応し、医療機関を受診する必要があります。

※チアノーゼ:血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色すること
CuboAi ベビーセンサーパッドは、ベビーモニターとセットで使用するもので、赤ちゃんの微細な動きを即座に検知するために、マットレスの下に設置します。

図:CuboAi ベビーセンサーパッドは、ベビーモニターとセットで使用するもので、赤ちゃんの微細な動きを即座に検知するために、マットレスの下に設置します。

 

五、赤ちゃんの吐乳と溢乳にはどのような違いがありますか?

赤ちゃんの吐乳は溢乳に比べて量がかなり多く、吐き出す時の距離は1メートルほどにもなり、噴射状に吐き出されます。溢乳の色は通常、飲んだミルクの色と似ていますが、吐乳の色は、嘔吐が授乳後どれくらいで起こるかによって異なります。

授乳後15~30分以内であれば、吐出されたミルクの色は飲んだミルクの色に近いですが、30分以上経過してからの場合、色が変わり、胆汁を含んだ黄色や緑色になることもあります。

 

六、 赤ちゃんの吐乳の一般的な原因は何ですか?

感染性胃腸炎を除いて、赤ちゃんが生後1~2ヶ月の頃に最も起こりやすいのは、※肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)です。発生率は約2%~4%で、男児は女児の4~6倍の頻度で発生します。特に第一子の男児に多く、家族歴のリスクもあります。

これは先天的な問題で、主な症状は授乳後30分以内に噴射状の嘔吐が見られることです。吐き出されたミルクの色は飲んだミルクの色と似ており、毎回の授乳後にこのような症状が現れます。赤ちゃんは吐いた後もお腹が空いて泣き、再びミルクを欲しがりますが、飲むと同じことが繰り返されます。このような状況が続くため、しばしば親の不安を引き起こします。

また、まれに先天性の腸の異常で腸閉塞を起こし、新生児が嘔吐することもあります。 吐いたミルクの色は黄緑色で、これは主に胆汁の色です。

腸閉塞に似た※腸重積というまれな病態もあり、これは乳児に持続的な嘔吐と泣き声を引き起こすことがあります。 まれに、腸がヘルニアの出口に引っかかって腸閉塞を起こし、泣いたり吐いたりする乳児ヘルニアもあります。 

※肥厚性幽門狭窄症:ひこうせいゆうもんきょうさくしょう、新生児や乳児に発生する病気で、胃の幽門(胃と小腸を繋ぐ部分)の筋肉が異常に肥厚することにより、食物が胃から小腸へ通過しにくくなる状態
※腸重積:ちょうじゅうせき、腸の一部が隣接する腸管に入り込んでしまう状態。3ヶ月から3歳までの乳幼児に最も多く発生する


七、赤ちゃんの嘔吐は、どのように対処すれば良いですか

最も重要なのは、嘔吐の原因を特定することです。通常、赤ちゃんを4時間禁食させ、嘔吐が続くかどうかを観察します。嘔吐が止まった場合は、少量ずつこまめに食事を与える方法を検討し、最初は流動食を中心にします。

もし嘔吐が続く場合は、医療機関を受診する必要があります。医師は嘔吐の可能性のある原因を尋ね、身体検査を行います。必要に応じて腹部超音波、X線、CTスキャンなどの検査を行い、嘔吐の原因を見つけます。

肥厚性幽門狭窄症の場合、外科手術が行われることがあり、これにより嘔吐の症状は迅速に緩和されます。腸閉塞の場合は、閉塞の位置に応じてさらなる手術が必要です。腸重積の場合は、温かい生理食塩水による浣腸を行い、腸の閉塞を解消します。

 

八、赤ちゃんの嘔吐について、すぐに病院での検査が必要なケースは?

以下の状況が見られた場合、直ちに病院で検査を受ける必要があります:

*噴射状の嘔吐

*嘔吐物が胆汁の黄緑色をしている

*嘔吐物に血が混じっている

*便に血が混じっている、または濃い赤色の便が出る

*赤ちゃんが泣き続け、お腹が腫れて痛みを訴えている

*発熱して心拍数や呼吸数が増加している

*尿の量が減少し、脱水の兆候が見られる

*首が硬直している

これらの症状が見られた場合、すぐに病院に連れて行き、嘔吐の原因を特定する必要があります。特に腸閉塞の可能性がある場合は、小児外科医による迅速な手術が必要で、重大な事態を避けるために即時の対応が求められます。

 

王志堅(Chih-Chien Wang)医師のバックグラウンド情報:

現職
三軍総合病院小児科特任教授
国防医科大学医学部小児学科教授

学位
国防医科大学医学博士

専門領域
感染症、重症医学の専門家

経歴
国防医科大学医学博士
台湾小児科専門医
台湾感染症専門医
台湾小児救急専門医

三軍總醫院小兒部 特聘教授 王志堅 Chih-Chien Wang
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