台湾三軍総合病院小児科教授 王志堅(台湾)
発熱とは?
発熱とは、体温が正常範囲を超えることを指します。体温が肛門で測って38度以上、口で測って37.8度以上、わきの下で測って37.2度以上だと、発熱と考えられます。
※日本では一般的に 安静時にわきの下で測った体温が37.5℃以上の場合、発熱としています
発熱の最も一般的な原因は「感染」です。ウイルスや細菌が体内に侵入すると、免疫システムが反応し、体がウイルスや細菌に対抗するために、体温が上昇します。
発熱時には手足が冷たく感じ、体が震えることがあります。これは、体が熱を逃さないようにするために皮膚の微小血管が収縮することと、筋肉が収縮して熱を生産することが関係しており、その結果体温が上昇します。症状が軽減すると、体温は正常に戻ります。
発熱の測定
現在、水銀温度計は使用されておらず、最も一般的に使用されているのは電子式の体温計で、わきの下の温度を測ります。
※日本で一番普及しているのは、わきの下で測る電子式体温計で、その次はおでこや手首にセンサーを向けて測る非接触電子式です。
発熱が役に立つポイント
発熱は免疫能力を強化し、死亡率を低下させることがあります。動物実験では、発熱中に細菌やウイルスの増殖が抑えられ、白血球の移動と分裂速度が上昇し、細胞性ホルモンの分泌や抗ウイルス作用が増加することが確認されています。
発熱は体が病気であることを警告するサインでもあり、疲労感を感じ、休みたくなったり、食欲が落ちたりします。治療を受けることで回復を早める助けとなります。
発熱時のケアと解熱
病気の子どもが発熱している場合、冷房や扇風機を使用しても問題はありません。しかし、室内の温度を管理する必要があります。
一般的に使用される解熱薬にはアセトアミノフェンとイブプロフェンの2種類があり、経口シロップ、錠剤、座薬などの形で投与することができます。複数の異なる解熱薬を同時に使用することは避け、体温が過度に下がることによる危険を防ぎましょう。
また、子どもには十分な水分補給を促し、水分を含む食品(果物など)も適しています。軽い運動は大丈夫ですが、激しい運動は避けましょう。
発熱に関する一般的な誤解
「発熱があると脳に損傷を与える」という考えは誤りです。体温が41.7度を超えない限り、脳に影響はありません。発熱の温度が高いからといって、病気が重いとは限らず、体温と病気の重さは必ずしも比例しないことがあります。
重度の感染症の場合、体温が正常または低下していることもあります。多くの家族が子どもに発熱があると「抗生物質治療が必要だ」と考えがちですが、ほとんどの発熱はウイルス感染が原因であり、抗生物質は細菌感染の際にのみ必要です。
発熱への恐怖から、何度も体温を測って子どもが十分に休めなかったり、必要のない検査や過剰な解熱薬、抗生物質を使用することがありますが、これにより薬の副作用や医療費が増加する危険があります。
いつ医療機関を受診すべき?
以下の発熱の症状がある場合、外来診療を受けることをおすすめします:
1. 2歳未満の幼児で、体温が39度を超える場合
2. 明らかな耳痛、腹痛、頭痛、または排尿時の痛みがある場合
3. 発熱が3日以上続く場合
4. 明らかな症状がない場合
5. 嘔吐と下痢が同時にある場合
6. 解熱後24時間を超えて再び発熱した場合
7. 熱痙攣の病歴がある場合
8. 親が子どもの発熱について不安を感じる場合
以下の発熱の症状がある場合は、すぐに救急外来を受診する必要があります:
1. 月齢が3ヶ月未満の乳児
2. 体温が40.5度を超える場合
3. 泣いてもなかなか落ち着かない場合
4. 活動力が低下し、眠気が強い、または意識が混濁している場合
5. けいれんがある場合
6. 首のこわばりがある場合
7. 皮膚に出血点や紫斑が現れる場合
8. 呼吸困難や唇が紫色になる場合
9. 持続的な嘔吐や血便がある場合
医師に提供すべき発熱に関する情報
1.発熱が始まった時期
2. 発熱時の体温
3. 食事の量
4. 活動力や精神状態
5. 肌の色や呼吸の状態
6. 尿の量や色
7. 便の形状や色
8. 嘔吐物の量や色
9. 旅行歴、職業歴、接触歴、集団発生歴(TOCC)
発熱している子どものケアのポイント
最後に、「発熱」についての正しい認識をお伝えします。
発熱は病気そのものではなく、咳や鼻水と同じように病気の症状のひとつです。通常、3〜5日で治まります。発熱の主な役割は、体が感染と戦い、侵入したウイルスや細菌を排除することです。
子どもが発熱している場合、まずは子どもの活動力を観察し、適切な水分補給と休息を促します。重篤な症状がないか注意を払い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。医師の判断に基づいた、正しい治療を受けることが重要です。
1. 子どもに水をたくさん飲ませて、水分を十分に補給しましょう。
2. 適度な活動を促し、激しい運動は避けましょう。
3. 室内を涼しく保ち、必要に応じて冷房や扇風機を使用しましょう。
4. 体温を下げるために温水で身体を拭くことができます。冷たい水やアルコールで拭くのは避けましょう。
王志堅(Chih-Chien Wang)医師のバックグラウンド情報:
現職
三軍総合病院小児科特任教授
国防医科大学医学部小児学科教授
学位
国防医科大学医学博士
専門領域
感染症、重症医学の専門家
経歴
国防医科大学医学博士
台湾小児科専門医
台湾感染症専門医
台湾小児救急専門医